スキップできない広告は視聴者に「ウザい」と思われ、ブランドイメージを損なうリスクがあります。
だからといって、スキップボタンを設置すると、それを押されて広告を見て貰えず、社名や商品名を覚えてもらえない可能性があります。
なので数秒が経過してから、スキップボタンを表示するのが、バランスの良い広告といえますが、この時間設定も難しいものです。
長いとイライラさせますし、短いと認知されません。
では何秒後にスキップボタンを表示すれば良いのか?ということですが、「3秒」が最適かもしれません。
スキップできる広告でブランドを認知させることは可能か?
スキップボタンがブランド認知に与える影響を調べた、福建師範大学の研究チームによる実験があります。
この実験では、参加者を以下の2グループに分け、全体で6秒間の全画面広告を複数見せました。
- 広告表示から3秒後にスキップボタンが表示される
- スキップボタンが表示されず最期まで強制的に広告を見せられる
この結果、まず分かったことは、スキップボタンが表示されると、約6割の人がそれを押すということです。
次に、表示された広告に対する認知ですが、これに関しては、どちらのグループも差はありませんでした。
最期まで強制的に見せられようと、3秒後にスキップしようと、広告に出てきたブランドをどれだけ覚えていたかに、違いはなかったということです。
つまり、3秒間だけ見せることができれば、記憶には残せるということです。
ちなみに、スキップボタンが表示されるまでの時間を1秒にしたパターンでの実験も行っていますが、こちらではスキップできる条件の参加者のブランドに対する記憶が、有意に低下していました。
1秒では広告内容を覚えるには不十分ということです。
視聴者は最初の3秒で何をしているのか?
広告が表示されてから3秒の間に、視聴者は何をしているのでしょうか?
今回の実験ではそれも調べています。視線の動きや瞬き、注視点の座標をリアルタイムで追跡できるアイトラッキング装置を使って、広告視聴中の目の動きを分析しました。
その結果、最初の3秒間にブランド名の表示部分に対して、平均で2回ほど注視が行われ、合計500~600ミリ秒程度の視線が集中していたことが、分かりました。
これくらいの視線の集中があれば、ブランドを記憶するのに十分と考えられます。
スキップ可能な広告を出稿する際のポイント
企業がスキップ可能なモバイル広告を活用する場合、まず意識すべきは「最初の3秒間でユーザーの注意をどこに向けさせるか」です。
今回の実験からわかるように、広告がスキップされる前の3秒間でユーザーがブランド名を視認すれば、それだけで十分記憶に残すことができます。
したがって、ブランドロゴや企業名は視線が集まりやすい位置、具体的には画面の中央または左上に配置し、短時間でも自然と目に入るように設計することが重要です。
さらに、3秒以内に情報を伝えるために、ビジュアルやメッセージはシンプルかつ明快でなければなりません。
テキスト量を絞り、商品の特徴やブランドイメージを直感的に理解できるクリエイティブを制作することが求められます。
音声や動きに頼りすぎず、視覚的に一目で情報が伝わる構成が理想です。
スキップされるまでの3秒をどう活かすかに注力する
ユーザーの広告体験が重視される中で、「押しつけないけれど印象に残る」広告づくりが企業に求められています。
特にZ世代を中心とした若年層は、広告への感度が高く、わずかな違和感や不快感にも敏感です。
そのようなユーザーに対しては、スキップ可能な広告の設計が広告主の印象そのものを左右しかねません。
さらに、AIによる最適化技術の進展により、ユーザーが過去に見た広告の注視傾向などをもとに、スキップタイミングや表示位置を動的に変えるような、よりパーソナライズされた広告設計も可能になると考えられます。
こうした時代においては、「何秒見せるか」ではなく、「その数秒間で何をどう見せるか」が重要になります。
スキップされることを恐れるのではなく、その前の3秒をどう活かすかに注力してください。
参考文献:Xia Xia, Deyu Zhou, and Haifeng Li. (2020). The Effects of Skip Buttons on Brand Recognition in Open-Screen Advertising.