今は空前の人手不足時代です。
特に飲食店においては募集をかけても人が集まらず、雇ってもすぐに辞められるなどということも。
さらにはレベルの低い人材ばかり集まり、ダメな接客により顧客満足度を下げ、業績に悪影響を及ぼすこともあります。
このような環境の中で、飲食店が接客の質を高めつつ、優秀な人材の離職を防ぐにはどうすれば良いのでしょうか？
それは店長などの管理職が「サーヴァントリーダーシップ」を採用することです。
それによって、飲食店のパフォーマンスが高まり、従業員の離職率も低下することが分かっています。
サーヴァントリーダーシップとは
サーヴァントリーダーシップとは、リーダーが自ら率先して人々を支え、組織全体に奉仕の精神を根付かせる管理のスタイルです。
単に目標を達成するために指示を出すのではなく、従業員の成長や幸福を最優先にする点が特徴です。
例えば、リーダーが積極的に従業員の悩みを聞き、必要なサポートを提供することで、従業員は「自分を大切にしてくれる」と感じ、仕事への意欲が高まります。
また、リーダーは「自分が先に立って成功を得る」のではなく、「チーム全体が成功するために尽くす」ことを重視します。
これにより、リーダーが模範となり、従業員も同様に同僚や顧客を助け合う文化が育まれます。（このような波及効果を「サーヴァントリーダーシップ理論」といいます）
具体的な行動としては、従業員に自主性を与える、ミスを責めず成長の機会とする、倫理的な判断を優先するなどが挙げられます。
このように、サーヴァントリーダーシップを実践することで、組織内に信頼や助け合いの風土が生まれ、結果として業績の向上や離職率の低下につながります。
サーヴァントリーダーがいる飲食店は生産性が高い
サーヴァントリーダーシップが従業員や店舗全体に与える影響について、イリノイ大学のロバート・C・ライデン教授らが調査しています。
この調査では、アメリカの6つの州にある71店舗のレストランで働く、961人の従業員と71人の店長を対象にアンケートを行っています。
質問項目には「店長が従業員をどれくらい支えているか」「店全体に助け合いの雰囲気があるか」といった内容が含まれていました。
また、業績を評価するために、顧客満足度、配達や注文の正確さ、店舗の清潔さ、衛生状態など、複数の指標をデータとして収集しました。
さらに、従業員が職場にどれほど愛着を持ち、どの程度辞めたいと感じているかについても調べ、離職率に関する情報を分析しました。
調査の結果、サーヴァントリーダーシップを実践する店長がいる店舗では顧客対応の質が向上し、顧客満足度が高まるといった業績の向上と、離職率の低下が見られました。
サーヴァントリーダーシップの効果
なぜこのような効果が見られたのでしょうか？
それはサーヴァントリーダーシップのある店長は率先して従業員を支え、安心して働ける環境を作ることができていたからです。
このような環境では従業員同士も自然に協力し合うようになります。その結果、店舗全体の雰囲気が良くなり、パフォーマンスが向上したのです。
また、店長が従業員を尊重し、支援する姿勢を取ることで、従業員は自分が職場で大切にされていると感じ、「このお店で働き続けたい」という意識が強まりました。
このような心理的効果により、辞めたいと思う従業員が減少し、店舗の安定した運営につながったと考えられます。
従業員の満足度や働きやすさは飲食業界の競争力につながる
以上のように、サーヴァントリーダーシップを取り入れることで、飲食店は業績向上や離職率低下といった具体的な成果を上げることができます。
また、飲食店の現場においては忙しい時間帯のストレスや予期せぬトラブルに対応する力が求められますが、サーヴァントリーダーシップによる助け合いの文化が根付けば、このような問題にも柔軟に対応できるようになります。
これにより、顧客満足度のさらなる向上やリピーターの増加が期待できるでしょう。
さらに、こうした取り組みを進化させるにはデジタルツールを活用した効率的な業務管理や、従業員満足度を可視化する仕組みの導入も効果的です。
例えば、定期的なアンケートによって従業員の声を集め、店舗運営に反映することで、より働きやすい環境を構築できます。
人手不足の飲食業界において競争力を高めるには接客の質だけでなく、従業員の満足度や働きやすさといった内面的な要素も重要なカギとなります。
参考文献：Robert C. Liden, Sandy J. Wayne, et al. (2013). Servant Leadership and Serving Culture: Influence on Individual and Unit Performance.
