商品を見てるだけで、買う気がなさそうな客…。
どこの店にもやって来るものです。
このような客に対して、店員は話しかけて購買意欲を高める努力をするべきでしょうか?
それとも、他の見込客に費やすべき時間と労力を無駄にしないために、無視したり早々に会話を切り上げるべきでしょうか?
ちなみにボーフム大学のウィリアム・クロンらの調査によると、店員の約6割は「この客は買いそうかどうか」を判断する習慣があるそうです。
そして、約4割は買わなそうな客でも相手にし、約2割は買わなそうな客とのやり取りを早々に切り上げるとのことです。
実店舗でのデータ分析
さらにこの調査では、買わなそうな客への対応が店舗全体の売上にどう影響するか?ということも調べています。
ヨーロッパのファッション小売企業を対象に、42店舗、164人の販売員へのアンケート調査と販売成績のデータを分析しました。
具体的には以下のデータを集めています。
- 販売員へのアンケート:客が買わないと感じたときどのような行動をとるか?
- 販売成績データ:実際に販売員がどのくらい売り上げているか?
- 来客数データ:店舗ごとにどれくらいの来店客がいるか?
買わない客を相手にしない戦略の効果は状況次第
調査の結果、買わない客を無視することのメリットは、状況によって異なることが分かりました。
以下に重要なポイントを説明します。
1. 経験豊富な販売員なら効果的
経験がある販売員は、客が買うかどうかを正確に見極める能力があります。こうした販売員は買わなそうな客を相手にしないことで、無駄な時間を省き、他の買う可能性のある客に集中できるため、売上が上がることが多いです。
2. 来客数が多い店舗では有効
たくさんの客が来る店舗では、見込客も多く来店します。そのため、購入可能性が低い客に時間をかけるよりも、他の客に対応したほうが売上が伸びるケースが多いです。
3. 来客数が少ない店舗では逆効果
来客数が少ない店舗では、買わなそうな客を相手にしないという戦略はあまり効果的ではありませんでした。店内に客が少ない場合、対応するべき客がいなくなってしまうため、むしろ売上が減るリスクがあります。
4. 他の販売員も同じ戦略を使っていると競争が激化する
販売員全員が買わなそうな客を相手にしない戦略を取ると、買ってくれそうな客の取り合いが起こります。その結果、かえって売上が伸びなくなることがあります。
5. 客との関係を大切にするタイプは適度に相手にした方が良い
客との関係を大切にする販売員は、買わなそうな客もある程度は相手にすることで、時間はかかりますが徐々に売上が伸びるという結果も得られました。すぐに商品を買わない客でも、将来的にリピーターになる可能性があるからです。
小売店経営者が取るべき戦略
では、小売店の経営者はどのような戦略を取ればよいのでしょうか。
まず重要なのは、販売員の経験値を考慮することです。
経験の浅い販売員は誤った判断をする可能性が高いため、事前のトレーニングと実践によって、顧客の購入意欲を見極めるスキルを身につけさせることが大切です。
特に、来客数が少ない店舗では顧客一人ひとりとの関係を重視し、早急に見切るよりも丁寧な接客を心がけたほうが良い場合もあります。
一方で、来客数が多く忙しい店舗では経験豊富な販売員に「買わない客を相手にしない戦略」を積極的に活用させ、限られた時間を最大限に活用することで、効率的な接客を実現できます。
しかし、店舗全体でこの戦略を過剰に使いすぎると評判が落ちるリスクがあるため、チーム内で戦略のバランスを取ることが重要です。
- Cron, W.L., Alavi, S., Habel, J. et al.No conversion, no conversation: consequences of retail salespeople disengaging from unpromising prospects.

