なぜマクドナルドだけ低所得者層向けの安売り競争で勝てるのか?

米マクドナルドが発表した2025年10~12月期の売上高が、前年同期比10%増の70億900万ドルと、一人勝ち状態です。

この背景には経済格差が拡大する中での、低所得者の支出抑制の影響があります。そこに低価格セットをぶつけたマクドナルドの戦略勝ちなのです。

そして、この戦略で勝つことができるのもマクドナルドだけです。

なぜなら低所得者層向けの安売り競争は体力勝負だからです。最も資本力のある企業だけが生き残れるのです。

しかも外食産業においては、低所得者層の心理的な判断基準もマクドナルドに有利にはたらきます。

マクドナルドの規模と資本がつくる負けない構造

低所得者層向け市場では、企業の理想やブランドストーリーよりも基礎体力がモノを言います。

原材料の大量一括仕入れ、物流の最適化、世界規模でのサプライチェーン管理、こうした仕組みを高い水準で整備できる企業だけが、薄い利益幅でも事業を維持することができます。

マクドナルドはグローバル規模での調達力を持ち、単価交渉において他社より圧倒的に有利な立場にあります。

さらに、オペレーションの標準化が徹底されているため、従業員の技量に頼る必要がなく、人件費もコントロールしやすいです。

つまり価格を下げても、経営が破綻しにくい構造が出来上がっているということです。

さらに重要なのが資本の厚みです。値下げ競争は一種の持久戦であり、収益が圧縮される期間にどれだけ耐えられるかが勝敗を分けます。

資金余力の乏しい企業は途中で撤退せざるを得ませんが、潤沢な資本を持つ企業は一定期間、利益を削ってでも市場にとどまれるのです。

世界最大の外食企業はマクドナルドですから、この点でも圧倒的に有利なポジションにいるといえます。ライバルが潰れるまで待つ、という戦略が取れるのです。

規模によるコスト優位と資本による耐久力。この二つが組み合わさることで、マクドナルドは安売り市場で負けない構造を持っているのです。

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低所得者の食事の好みの面でもマクドナルドが有利

世界中、特に先進国においては健康志向が高まっています。

ですから安く健康的な食事を提供して、マクドナルドのようなファーストフードに対抗すれば良いと思うかもしれません。

しかし、この戦略では低所得者層向けの市場で勝つことは不可能です。なぜなら健康的な食事を提供するためには、量や腹持ちの良さを犠牲にしなければ利益を出せないからです。

つまり安くて健康的な食事を出そうと思ったら、それはお腹に溜まりにくい食事になってしまうということです。これは低所得者層に最もウケない食事です。

高所得者と低所得者の食品の選択の違い

消費者心理について研究しているベルナルド・アンドレッティ博士らが面白い実験を行っています。

この実験では、高所得者と低所得者に簡単なアンケートに協力してもらい、謝礼としてお菓子を渡しました。

このとき渡されるお菓子は、健康的なシリアルバーと不健康なポテトチップスのうちから、好きな方を選べるようにしました。

結果、高所得者はシリアルバーを選ぶ人が多く、低所得者ではポテトチップスを選ぶ人が多くなりました。

低所得者が満腹感を重視する理由

なぜ不健康な食事を選ぶのかについても調べていますが、多くの低所得者は「腹持ちしなそうだから」という理由を挙げました。

このように、低所得者ほど満腹感を重視して食べ物を選ぶ傾向にあることは、他の研究からも判明していることです。

これには進化心理学的な理由が考えられます。食事というのは生存に関わる重要なものですが、所得が低いというのは食事を得られなくなるリスクが高いということです。

つまり、本能的に生存の危機を感じている状態なのです。このような状態では、食べられるときにお腹いっぱいに食べておくことが最適な生存戦略となります。

そのため、満腹感が最も重視すべき要因になるということです。

健康そうな食事は選ばれにくい

この研究からいえることは、低所得者の食事の選択基準においても、満腹感を得やすい食事を提供しているマクドナルドは有利ということです。

仮に同じ値段で同じカロリーの内容を提供できたとしても、健康そうな食事は選ばれにくいのです。

健康そうな食事は「美味しくなさそう」「腹持ちが悪そう」と判断され、選ばれにくいことも判明しています。

子供時代から既に味を覚えてしまっている

数年前に早稲田大学のマーケティング講座で、講師をしていた当時の吉野家の役員が「生娘をシャブ漬け戦略」と言って問題になったことがあります。

上京したばかりの若い女性が、男性に高い食事を奢ってもらうようになって舌が肥えてしまう前に、安い牛丼を食べさせることで依存させる戦略なのだとか。

吉野家やマクドナルドが意図してそのような戦略を取っているとは思いませんが、ファーストフードというのは必然的にそういった構造となってしまうものです。

若い女性というよりも、子供のうちに濃い味に慣れてしまうことで、健康的な食事を味気ないものに感じ、顧客として囲い込まれてしまうのです。

親の食事の選択と、子供時代の食生活は成人後の食事の選択に影響することが研究からも分かっています。

つまり、多くの低所得者は子供時代からの長い年月をかけて、その店に依存しているのです。

このことからも分かるように、低所得者向けの外食市場においては、ジャンクフードを提供している資本力のある企業に戦いを挑んでも、勝ち目はないということです。

安売りを考えている飲食店の経営者は、経営戦略を見直しましょう。

参考文献
  • Andretti, B., Vieites, Y., Elmor, L., & Andrade, E. B. (2025).How Socioeconomic Status Shapes Food Preferences and Perceptions. Journal of Marketing, 89(6), 33-56.
著者プロフィール
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カネコユウスケ
マーケター / 経営コンサルタント
大手企業とスタートアップで業務部門やコンサルティングに従事した後、独立。現在はデジタルマーケティング、ウェブサイト・動画などによるオウンドメディア制作等を手掛ける。
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