なぜベンチャーキャピタル(VC)の女性はパフォーマンスが低いのか?

去年、国内のベンチャーキャピタル(VC)が、セクハラでニュースになりました。

(参考:「首絞められセクハラ後に退職勧奨された」VC大手・ジャフコ元契約社員が訴え

日本のVCに限った話ではなく、海外でも女性は不利な立場に置かれがちなようです。

こういった話は、VCに限った話ではありませんが…。

女性はビジネスの場で不利に扱われがちです。しかも、それが「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」によるものだったりするので厄介です。

無意識の差別によって、女性のパフォーマンスが上がらなくても実力のせいにされてしまいます。

今回は、なぜ女性は仕事で実績を上げにくいのか?ということをベンチャーキャピタル(VC)業界の事例を基に説明します。

VCで投資を決定できるポジションにいる女性は約10%

調査によって多少の差はありますが、ベンチャーキャピタルで主体的に投資の実行を決定できるポジションにいる女性の割合は、10%を少し超えるくらいとされています。

これは欧米のベンチャーキャピタルを対象とした統計ですから、日本ではもっと少ないでしょう。

実はこの女性の少なさが、女性ベンチャーキャピタリストの投資パフォーマンスの低下を招いている可能性があります。

女性は約10~15%ほどパフォーマンスが低い

ハーバードビジネススクールのポール・ゴンパーズ教授たちが。ベンチャーキャピタリストのパフォーマンスが男女でどのように違うのか、を分析した論文が『Journal of Financial and Quantitative Analysis』に掲載されています。

この分析では、Venture Sourceという、ベンチャーキャピタルの投資実績を網羅的に取得できるデータベースを使用しました。

その中にある1975年から2003年の投資を分析したところ、女性のベンチャーキャピタリストは、男性と比べて約10~15%ほどパフォーマンスが低い、という結果が出ました。

ここでいうパフォーマンスとはIPO(新規上場)まで行ったかどうかです。女性のベンチャーキャピタリストが手掛けた案件は、IPOする確率が低かったのです。

これは、学歴や職歴といった要因をコントロールした後でも「有意差あり」となっていました。

パフォーマンスの差は実力の差ではなかった

このような結果になったということは、女性はベンチャーキャピタルの仕事に向いていないということでしょうか?

そんなことはありません。パフォーマンスの差は、実力の差ではなかったのです。

では何の差かというと、同僚から受ける「恩恵」です。

女性のベンチャーキャピタリストは、同僚から受ける恩恵が少ないため、パフォーマンスが上がりにくいのです。

恩恵とは具体的にいうと、得られる情報やアドバイスのことです。これらはスタートアップの投資において重要な要素となります。

女性がこれらの恩恵を受けられていないことを裏付けるデータもあります。

男性は所属するベンチャーキャピタルのパフォーマンスと個人のパフォーマンスに相関があるのに対し、女性はそのような相関がなかったのです。

つまり、女性は所属するベンチャーキャピタルのレベルが、高くても低くても、個人のパフォーマンスは変わらないということです。

どうすればVCの男女差がなくなるのか?

ベンチャーキャピタリストのパフォーマンスの、男女差をなくすにはどうすれば良いのでしょうか?

今回の分析では以下の特徴を持つベンチャーキャピタルでは、パフォーマンスの男女差が見られないことが分かっています。

  • 規模が大きい
  • 歴史がある
  • 他の女性キャピタリストがいる

上記3つの特徴を持つベンチャーキャピタルでは、なぜ男女差がないのでしょうか?

まず、規模が大きかったり歴史のあるベンチャーキャピタルでは、きちんとした制度が確立されている可能性が高いです。そのため、男女に関係なく同じ育成システムに組み入れられ、得られる情報やアドバイスに差が出ないのです。

また、他の女性キャピタリストがいると、メンターとなってくれる可能性が高いことも、女性が不利にならない理由と考えられます。

全米経済研究所の調査によると、女性の経済学者は、女性の先輩経済学者に指導してもらうと、質の高い研究ができるという結果もあります。同性がメンターになってくれることのメリットは大きいと言えるでしょう。

つまり、女性のベンチャーキャピタリストが本来の力を発揮できるようにするためには、公平な制度設計と女性の割合を増やすことが必要ということです。

女性は気づかないうちに負担を引き受けている

今回紹介した研究とは関係ありませんが、組織というのは性別の割合が極端に偏ると、多数派に合わせてソフトもハードも設計される傾向があります。

男性が多い会社は男性に合わせて設計され、女性が多い会社は女性に合わせて設計されるのです。

細かい部分でいえばエアコンの設定温度や、什器類のサイズや高さが、多数派の性別に合わせられるということです。

これはそこに所属しているメンバーが意識しているかどうかに関係なく、自然とそうなってしまうこともあります。

つまり、ベンチャーキャピタルで少数派の女性は、男性に合わせて設計された組織で仕事をすることで、気づかないうちにストレスや負担を引き受け、実力を発揮できていない可能性もあるのです。

どちらかの性別のパフォーマンスが相対的に低い組織は、ソフトとハードの両面で差別がないか見直してみると良いかもしれませ​。

参考文献
  • Paul A. Gompers, Vladimir Mukharlyamov, Emily Weisburst, Yuhai Xuan. 2021.Gender Gaps in Venture Capital Performance.
  • Francine D. Blau, Janet M. Currie, Rachel T.A. Croson, Donna K. Ginther. 2010.CAN MENTORING HELP FEMALE ASSISTANT PROFESSORS? INTERIM RESULTS FROM A RANDOMIZED TRIAL.
著者プロフィール
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カネコユウスケ
マーケター / 経営コンサルタント
大手企業とスタートアップで業務部門やコンサルティングに従事した後、独立。現在はデジタルマーケティング、ウェブサイト・動画などによるオウンドメディア制作等を手掛ける。
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人事・組織論